シェアハウスソーシャル・キャピタル調査レポート

調査員の研究日誌
研究・調査の趣旨と意義について

未来のシェアハウスのために、今を見つめます。平木場です。

今回は、現在ひつじ不動産の皆様と私とで進めている研究プロジェクトについて、その目的を中心に趣旨を紹介していきます。


私がシェアハウスを研究するのは「そこにシェアハウスがあるからだ!」・・というわけではありません。今回の研究では、シェアハウスでの人との触れ合いや絆を定量的・客観的に測定して評価をし、その効用を明らかにする事が目的です。

シェアハウスには多くの魅力があります。

安全や安心、既存建築ストックの活用、国際性、入居者と運営者双方にとっての経済性・・・

それらの中で私は、特に“一緒に誰かと住むこと”を挙げたいと思います。

1ヶ月のシェアプレイス五反野での生活では、いろいろな人と話をし、お酒を飲み、料理を楽しみ、様々な触れ合いと絆が生まれる豊かな生活を感じました。

数名の方にはヒアリング調査もさせて頂いたのですが、やはり“一緒に誰かと住む”事は、生活の中で大きな意味を持っているようでした。

東京都では現在、全世帯のうち単身世帯は42.5%にまで増えています。


(東京都の単身世帯の割合 縦軸:%)

そしてこの傾向は、今後もさらに続くと予想されているのです。

人々が住まいにおける人との触れ合いや絆を失っていく現代の社会環境の中で、単身生活→シェア居住という流れやシェアハウスに住み続けるという選択は注目すべきもので、しっかりと見つめて理解することが求められるようになるのではないでしょうか。

とは言え、人との交流や関係は多ければ良いというものでもなければ、求める質のようなものだって人それぞれで、簡単に善し悪しが分かるものでもありません。また、同じ人でも独りでいたい時、楽しく盛り上がりたい時、落ち着いて話をしたい時、と様々に嗜好が変化します。

だから、人と人との触れ合いや絆を研究するのは、実は非常に難しいのです。

交流や関係を測る・・果たしてそんな事ができるのでしょうか。

今回の研究ではシェアハウスの“一緒に誰かと住む”という特性について調査と分析を行うのですが、この際、ソーシャル・キャピタルという概念を活用してゆきます。

ソーシャル・キャピタルとは、信頼、互酬性(お互いにメリットを与え合う事)の規範、ネットワークといった、人々の協調行動を可能にし、社会の効率性を高めることができる社会組織が備える特徴であるとされています。

例えば、仕事の交渉の場でお互いの信頼関係が有る場合と無い場合とでは、取引にかかるコストが大きく違ってきます。また、住民の間にしっかりしたネットワークがある地域では、地震や水害のような緊急時に協力関係が容易に築かれます。こういった社会的メリットを生み出す信頼やネットワークを、ソーシャル・キャピタルと言います。

ソーシャル・キャピタルについては1990年代以降世界各国の研究者による研究が盛んになり、欧米を中心とした各国政府の他、国連、世界銀行といった国際組織も政策展開や援助に役立てています。

近年ではコミュニティの中の人々を結びつける結合型ソーシャル・キャピタル(Bonding Social Capital)、外の組織や人と結びつける橋渡し型ソーシャル・キャピタルといったように、概念の類型化も進んでいます。

ソーシャル・キャピタルという概念の意義の1つは、人との触れ合いや絆といった目に見えないものを定量的・客観的に測定し評価することができる事です。

もちろん100%測定し評価できる訳ではありません。ですが、政策やプロジェクトの効果測定等を目的にソーシャル・キャピタルを的確に測定する研究が積み重ねられ、指標構築が現在進行形で進んでいます。

また、個人の健康や社会全体の経済成長、犯罪発生率の低下に対する効用も期待されており、実証的な研究も進んでいます。

下のグラフは、横軸の“大抵の人は、チャンスがあればあなたの弱みにつけこむだろう”と考える度合いと、縦軸の“地域間の年齢構成を考慮した死亡率”に関係がある事を示しています。


(年齢調整死亡率と信頼感の関係 Social Capital: a guide to its measurement, Kawachi Ichiro氏ら)

この調査によれば、ソーシャル・キャピタルが高い地域の人ほど死亡率が低い、つまり健康だという事になります。

今回の研究でも、このようなソーシャル・キャピタルの概念を用いることにより、シェアハウスに住む生活者の方々にとっての“人との触れ合いや絆”を研究していきます。健康、安心、エコロジー性能、寛容性と交流の多様さといった人とのつながりと一見関係がないようなことも確認できたらと思います。

これからも随時研究報告をしていきますので、宜しくお願いします!

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